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(更新: 2026-03-02)9分で読める

Mermaid ganttチャートのコロンの罠とmermaid.render()によるテスト戦略

  • Web開発
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Mermaid.jsはMarkdown内にフローチャートやシーケンス図を埋め込める便利なライブラリですが、ganttチャートには知らなければ気づけない落とし穴があります。私たちはブログ記事に埋め込んだganttチャートが「Syntax error in text」で壊れる問題に遭遇し、その原因調査の過程で mermaid.parse() では検出できないエラーが存在する ことを発見しました。

この記事でわかること:

  • Mermaid ganttチャートでタスク名にコロン(:)を含めるとパースが壊れる理由と回避方法
  • mermaid.parse()mermaid.render() の違い -- なぜ parse() だけではテストとして不十分なのか
  • vitest/jsdom環境で mermaid.render() を動かすためのSVG mockテクニック

ganttチャートのコロンの罠

タスク名に時刻を書くとエラーになる

私たちのブログ記事に、以下のようなganttチャートを埋め込んでいました。

gantt
    title JST 00:00 -- 09:00 のタイムゾーンギャップ
    dateFormat HH:mm
    axisFormat %H:%M
    section 問題の時間帯
    JST 00:00 - 09:00(テスト失敗):crit, c1, 00:00, 09:00

一見すると問題なさそうですが、ブラウザでの描画時にエラーが発生し、図が表示されませんでした。

原因: コロンは区切り文字

Mermaidのganttチャート仕様では、タスク行は以下のフォーマットで記述します。

タスク名 :[タグ,] [タスクID,] <開始日>, <終了日または期間>

ここで重要なのは、コロン(:)がタスク名とメタデータの区切り文字として使われる という点です。Mermaidのパーサーはタスク行を読み込むとき、最初のコロンを見つけた位置でタスク名とメタデータを分割します。

問題のタスク行をもう一度見てみましょう。

JST 00:00 - 09:00(テスト失敗):crit, c1, 00:00, 09:00

人間が読めば「JST 00:00 - 09:00(テスト失敗)」がタスク名で、crit, c1, 00:00, 09:00 がメタデータだとわかります。しかしMermaidのパーサーは最初のコロンで分割するため、以下のように解釈します。

  • タスク名: JST 00
  • メタデータ: 00 - 09:00(テスト失敗):crit, c1, 00:00, 09:00

メタデータ部分の解釈が破綻し、レンダリング時にエラーが発生します。titleについても同様で、title JST 00:00 -- 09:00 のコロンがパーサーに影響します。

回避方法: タスク名からコロンを除去する

ganttチャートのタスク名にコロンをエスケープする仕組みは、Mermaidには用意されていません。コロンが区切り文字として予約されていることは公式ドキュメントのganttチャート仕様に記載されており、セクション名やタスク名にコロンを含めると正しくパースされない既知の制限です。

回避策はシンプルで、タスク名にコロンを含めないことです。私たちは時刻表記を日本語に変更しました。

gantt
    title JST 0時〜9時のタイムゾーンギャップ
    dateFormat HH:mm
    axisFormat %H:%M
    section 問題の時間帯
    JST 0時〜9時(テスト失敗) :crit, c1, 00:00, 09:00

メタデータ部分(:crit, c1, 00:00, 09:00)のコロンは dateFormat HH:mm で指定した時刻フォーマットの一部であり、こちらは問題ありません。区切り文字のコロンと dateFormat で使われるコロンは、パーサーの処理段階が異なるためです。

Tip

ganttチャートのタスク名に時刻を表示したい場合は、00:00 ではなく 0時midnight のようなコロンを含まない表現を使いましょう。これはMermaid v11.x時点での制限であり、将来のバージョンでエスケープ機構が追加される可能性はありますが、現時点では回避が唯一の対策です。

parse() では見つからないエラー

mermaid.parse() と mermaid.render() の違い

このganttチャートのエラーを再発防止するために、CIでMermaidの構文をテストする仕組みを構築することにしました。最初に検討したのは mermaid.parse() による構文チェックです。

mermaid.parse() はMermaidの公式APIで、ダイアグラムの構文を解析してAST(抽象構文木)を生成します。構文が不正な場合はエラーを返します。テスト目的にはこれで十分に思えます。

しかし、実際に検証したところ 問題のganttチャートは mermaid.parse() を通過してしまいました

// vitest/jsdom 環境での検証結果
const result = await mermaid.parse(problematicGanttCode, {
  suppressErrors: true,
});
console.log(result); // => { ... } (エラーではない。パース成功)

parse() は構文解析(トークン分割とAST生成)のみを行います。ganttチャートの場合、タスク行のテキストを「構文として有効な形式か」まではチェックしますが、タスク名中のコロンによるメタデータの誤解釈は レンダリング段階(compileTask 関数) で初めて問題になります。

一方、mermaid.render() は構文解析からSVG生成までの全工程を実行するため、compileTask 段階のエラーも検出できます。

// mermaid.render() ではエラーが発生する
try {
  await mermaid.render("test-id", problematicGanttCode);
} catch (error) {
  console.log(error.message);
  // => "Cannot read properties of undefined (reading 'type')"
}

以下の表は、vitest/jsdom環境での実際の検証結果です。

テスト対象 mermaid.parse() mermaid.render()
コロンを含むgantt(修正前) 通過(偽陰性) エラー検出
コロンを除去したgantt(修正後) 通過 成功(SVG生成)
有効なflowchart 通過 成功(SVG生成)
有効なsequenceDiagram 通過 成功(SVG生成)
構文が壊れたflowchart エラー検出 エラー検出

parse() が「構文として有効」と判断しても、render() でエラーになるケースが存在します。テストとして parse() だけを使うと、今回のようなバグを見逃す偽陰性が発生します。

テストには render() を使うべき理由

Mermaidのダイアグラムには大きく2段階の処理があります。

  1. 構文解析(parse): テキストをトークンに分割し、ASTを生成する
  2. レンダリング(render): ASTを解釈し、各要素の意味を処理してSVGを生成する

parse() は第1段階のみ、render() は第1段階と第2段階の両方を実行します。ganttチャートのコロン問題のように、「構文としては有効だが意味的に不正」なエラーは第2段階で発生するため、parse() だけでは検出できません。

Mermaidのダイアグラムが実際にブラウザで描画できることを保証したい場合は、render() を使ったテストが必要です。

jsdom環境での mermaid.render() テスト

jsdom には SVG API が足りない

mermaid.render() はSVGを生成するため、DOM環境が必要です。vitest では jsdom を使ってブラウザ相当のDOM環境をエミュレートできますが、jsdomには一部のSVG APIが実装されていません。

具体的には、SVGElement.prototype.getBBox()SVGElement.prototype.getComputedTextLength() が未実装です(jsdom/jsdom#918)。Mermaidはダイアグラムのレイアウト計算でこれらのAPIを使用するため、素のjsdom環境では 全てのダイアグラムで render() が失敗します。

TypeError: this.getBBox is not a function

このエラーはMermaidの構文や意味に関係なく発生するため、このままではテストとして機能しません。

SVG mock で解決する

解決策は、不足しているSVG APIをモックすることです。

import { describe, test, expect, beforeAll } from "vitest";

describe("Mermaid全数バリデーション", () => {
  let mermaid;

  beforeAll(async () => {
    // jsdom に不足している SVG API をモックする
    SVGElement.prototype.getBBox = function () {
      return { x: 0, y: 0, width: 100, height: 20 };
    };
    SVGElement.prototype.getComputedTextLength = function () {
      return 50;
    };

    // mermaid は ESM パッケージのため動的 import を使用
    const mermaidModule = await import("mermaid");
    mermaid = mermaidModule.default;
    mermaid.initialize({ startOnLoad: false });
  });

  test("有効なダイアグラムはレンダリングに成功する", async () => {
    const result = await mermaid.render(
      "test-valid",
      `
      graph TD
        A[開始] --> B[終了]
    `,
    );
    expect(result.svg).toBeTruthy();
  });
});

Note

この記事のコード例は、説明に必要な部分を抜粋・簡略化したものです。実際のソースコードはGitHubリポジトリで確認できます。

getBBox() はSVG要素のバウンディングボックス(位置とサイズ)を返すAPIです。モックでは固定値を返していますが、テストの目的は「レンダリングがエラーなく完了するか」の検証であり、レイアウトの正確性は問いません。このモックにより、以下の判定が可能になります。

  • 構文・意味ともに有効なダイアグラム: SVGが正常に生成される(テスト成功)
  • 構文エラーまたは意味エラーのあるダイアグラム: Mermaidがエラーを投げる(テスト失敗)

getBBox の戻り値が固定であっても、エラーの有無の判定には影響しません。レイアウトの見た目が正確かどうかは別の問題であり、それはブラウザでの目視確認やE2Eテストの範疇です。

モックのスコープを限定する

SVG APIのモックは、Mermaidバリデーションテスト専用です。他のテストに影響を与えないよう、テストファイル内の beforeAll で設定しています。グローバルなテストセットアップファイルには追加しません。

// テストファイル内の beforeAll で設定(グローバルには影響しない)
beforeAll(async () => {
  SVGElement.prototype.getBBox = function () {
    return { x: 0, y: 0, width: 100, height: 20 };
  };
  // ...
});

vitestはテストファイルごとに独立したワーカーで実行するため、このモックが他のテストファイルに漏れ出すことはありません。

全記事の全ブロックを自動テストする

私たちのサイトでは、ブログ記事のMarkdownファイルからMermaidコードブロックを正規表現で抽出し、各ブロックに対して mermaid.render() を実行するテストを構築しました。

/** Markdown テキストから全 Mermaid コードブロックを抽出する */
function extractMermaidBlocks(markdown: string): MermaidBlock[] {
  const pattern = /^```mermaid\n([\s\S]*?)^```/gm;
  const blocks: MermaidBlock[] = [];
  let match;
  let blockIndex = 0;

  while ((match = pattern.exec(markdown)) !== null) {
    const startLine = markdown.substring(0, match.index).split("\n").length;
    blocks.push({ code: match[1], blockIndex, startLine });
    blockIndex++;
  }
  return blocks;
}

テストは src/blog/content/ ディレクトリの全 .md ファイルを動的に走査するため、新しい記事を追加したときも自動的にテスト対象になります。記事数やブロック数をハードコードする必要はありません。

テスト失敗時には、どのファイルの何番目のブロック(何行目)でエラーが発生したかが明確にわかるエラーメッセージを出力します。

Mermaidレンダリングエラー
  ファイル: 2026-03-02-javascript-date-pitfalls-and-fixes.md
  ブロック: #0 (行 226)
  コード先頭:
    gantt
        title JST 00:00 -- 09:00 のタイムゾーンギャップ
        ...
  エラー: Cannot read properties of undefined (reading 'type')

まとめ

Mermaid.jsのganttチャートを使う際に覚えておくべきポイントをまとめます。

項目 内容
ganttのコロン制限 タスク名では : が区切り文字として使われるため、時刻表記(00:00)などコロンを含むテキストは使用できない
回避方法 タスク名からコロンを除去する(例: 0時〜9時 のような表現に変更)
parse() の限界 mermaid.parse() は構文解析のみで、ganttのコロン問題のような意味的エラーは検出できない
テスト戦略 mermaid.render() を使うことで、構文エラーと意味エラーの両方を検出できる
jsdom対策 SVGElement.prototype.getBBoxgetComputedTextLength のモックが必要

Mermaidは手軽にダイアグラムを埋め込める強力なツールですが、ganttチャートのコロン制限のように、公式ドキュメントを読んだだけでは気づきにくい制約もあります。CIでの自動テストを導入することで、こうした問題を早期に発見できる体制を整えることができます。

Mermaidの各ダイアグラムタイプの詳細な仕様は、公式ドキュメントで確認できます。

ソースコードはGitHubリポジトリで公開しています。

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