MarkedのHTML出力を安全にする設計ガイド
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Markdownで書いたコンテンツをHTMLに変換し、Webページに表示する。ブログやドキュメントサイトではごく一般的な処理ですが、変換後のHTMLをそのままレンダリングすると、XSS(クロスサイトスクリプティング)のリスクが生じます。
この記事では、markedを使ったNext.jsプロジェクトでMarkdown出力をサニタイズした経験をもとに、以下の内容を解説します。
- markedの出力をサニタイズする必要性と、放置した場合の具体的なリスク
- sanitize-htmlとisomorphic-dompurifyの選定判断基準
- GFMタスクリスト・GFM Alert・mermaidに対応したホワイトリスト設定のコード例(コピペ可)
- 共通関数への統合で適用漏れを防ぐパターン
- 自分のプロジェクトでサニタイズの動作を確認する方法
なぜMarkdown出力のサニタイズが必要か
markedのsanitizeオプション廃止
markedはかつてsanitizeオプションを提供していましたが、v0.7.0で非推奨となり、その後完全に削除されました。marked公式のセキュリティドキュメントでは、出力のサニタイズにはDOMPurifyなどの外部ライブラリの使用が推奨されています。
つまり、現在のmarkedはMarkdown内のHTMLタグをそのまま出力します。これは仕様どおりの動作ですが、サニタイズなしでdangerouslySetInnerHTMLに渡すと、悪意あるコンテンツが実行される可能性があります。
dangerouslySetInnerHTMLのリスク
ReactやNext.jsでdangerouslySetInnerHTMLを使うケースでは、渡すHTMLの安全性はアプリケーション側の責任です。以下のMarkdownを考えてみてください。
こんにちは
<img src="x" onerror="alert('XSS')">
続きのテキスト
markedでこのMarkdownを変換すると、イベントハンドラ属性を含むHTMLがそのまま出力されます。
<p>こんにちは</p>
<img src="x" onerror="alert('XSS')" />
<p>続きのテキスト</p>
この出力をdangerouslySetInnerHTMLでレンダリングすると、ブラウザが<img>タグを解釈した時点でonerrorハンドラが実行され、XSS攻撃が成立します。<script>タグについてはHTML5の仕様によりinnerHTML経由で挿入された場合は実行されませんが、イベントハンドラ属性やjavascript:プロトコルのリンクはinnerHTML経由でも動作するため、これらが実際の攻撃ベクトルになります。
<!-- imgタグのonerror属性(innerHTML経由でも実行される) -->
<img src="x" onerror="alert('XSS')" />
<!-- javascript:プロトコルのリンク(ユーザーがクリックすると実行される) -->
<a href="javascript:alert('XSS')">クリック</a>
<!-- data:プロトコルのimg -->
<img src="data:text/html,<script>alert('XSS')</script>" />
ブログ記事やユーザー入力のMarkdownを扱うプロジェクトでは、これらの攻撃ベクトルに対してサニタイズが不可欠です。
sanitize-html vs isomorphic-dompurify: どちらを選ぶか
Markdown出力のサニタイズには、主に2つの選択肢があります。
| 項目 | sanitize-html | isomorphic-dompurify |
|---|---|---|
| 動作方式 | 文字列ベースのパース | DOMベースのパース |
| Node.js依存 | なし(ピュアJS) | jsdomが必要 |
| 設定方式 | ホワイトリスト(許可タグ・属性を列挙) | デフォルトで広範なタグを許可(ホワイトリスト・ブラックリスト両方で設定可能) |
| バンドルサイズ | 小さい | jsdom込みで大きい |
| 主な用途 | SSR中心のプロジェクト | ブラウザ中心のプロジェクト |
選定の判断基準
sanitize-htmlが適しているケース:
- SSR(サーバーサイドレンダリング)中心で、ビルド時にHTMLを生成するプロジェクト
- jsdomへの依存を避けたい場合
- 許可するタグと属性を明示的に管理したい場合
isomorphic-dompurifyが適しているケース:
- ブラウザでリアルタイムにサニタイズする必要がある場合
- DOMPurifyの実績あるパーサーを活用したい場合
私たちがsanitize-htmlを選んだ理由
私たちのプロジェクトはNext.jsの静的生成(SSG)を基本としており、Markdown→HTMLの変換はビルド時にNode.js上で実行されます。この用途では、jsdomへの依存がなく、ホワイトリスト方式で許可するHTML要素を明示的にコントロールできるsanitize-htmlが適していました。
Note
isomorphic-dompurifyはNode.js環境ではjsdomを介してDOMPurifyを動作させます。jsdomはブラウザのDOM APIをJavaScriptで再実装したもので、依存ツリーが大きくなります。SSR中心のプロジェクトでは、この追加の依存が不要なsanitize-htmlのほうがシンプルです。
ホワイトリストの設計: 何を許可し、何をブロックするか
sanitize-htmlの設計思想は「明示的に許可したものだけを通す」というホワイトリスト方式です。markedが生成するHTML要素と、プロジェクトで使用する拡張機能が出力する要素を洗い出し、それだけを許可します。
基本のHTML要素
markedがGFM(GitHub Flavored Markdown)モードで出力する基本的なHTML要素です。
const ALLOWED_TAGS: string[] = [
// ブロック要素
"p",
"h1",
"h2",
"h3",
"h4",
"h5",
"h6",
"ul",
"ol",
"li",
"blockquote",
"pre",
"hr",
"br",
"table",
"thead",
"tbody",
"tr",
"th",
"td",
// インライン要素
"a",
"strong",
"em",
"code",
"del",
"img",
];
<script>、<style>、<iframe>、<object>、<embed>のような危険なタグは、このリストに含めないことで自動的にブロックされます。
GFMタスクリスト対応
GFMのタスクリスト記法(- [x] 完了 / - [ ] 未完了)をmarkedで変換すると、以下のHTMLが生成されます。
<ul>
<li><input type="checkbox" checked="" disabled="" /> 完了した項目</li>
<li><input type="checkbox" disabled="" /> まだの項目</li>
</ul>
このチェックボックスを正しく表示するには、inputタグと、type、checked、disabledの3つの属性を許可する必要があります。
const ALLOWED_TAGS: string[] = [
// ...基本要素に加えて
"input", // GFMタスクリストのチェックボックス
];
const ALLOWED_ATTRIBUTES: Record<string, string[]> = {
// GFMタスクリストのチェックボックス属性
input: ["type", "checked", "disabled"],
};
Important
sanitize-htmlはデフォルトでinputタグの属性をすべて除去します。type、checked、disabledを明示的に許可しないと、チェックボックスがただの空の<input>要素になり、タスクリストの完了/未完了が区別できなくなります。
GFM Alert対応
GFM Alert構文(> [!NOTE]、> [!WARNING]など)をmarked-alertで変換すると、以下のようなHTMLが生成されます。
<div class="markdown-alert markdown-alert-note">
<p class="markdown-alert-title">
<svg
class="octicon"
viewBox="0 0 16 16"
width="16"
height="16"
aria-hidden="true"
>
<path d="M0 8z"></path>
</svg>
Note
</p>
<p>補足テキスト</p>
</div>
これに対応するには、div、p、svg、pathタグと、それぞれのクラス属性・SVG属性を許可します。
const ALLOWED_TAGS: string[] = [
// ...基本要素に加えて
"div",
"span",
"section", // GFM AlertやmermaidのコンテナとしてのHTML要素
"details",
"summary", // 折りたたみ要素
"svg",
"path", // GFM Alertのアイコン用SVG
];
const ALLOWED_ATTRIBUTES: Record<string, string[]> = {
// GFM Alertのクラス属性
p: ["class"],
div: ["class"],
span: ["class"],
section: ["class"],
// SVGアイコンの属性
svg: ["class", "viewBox", "width", "height", "aria-hidden"],
path: ["d"],
};
mermaid図表対応
mermaidのコードブロックをカスタムレンダラーで<div class="mermaid">に変換している場合、divタグのclass属性の許可が必要です。これはGFM Alert対応の設定と共通です。
テーブルのstyle属性制限
markedはテーブルセルのalign属性を出力しますが、一部のMarkdownプロセッサはstyle属性(text-align)として出力することがあります。style属性を許可する場合は、値を正規表現で限定して、任意のCSSインジェクションを防ぎます。
const ALLOWED_ATTRIBUTES: Record<string, string[]> = {
td: ["align", "style"],
th: ["align", "style"],
};
// style属性の値を安全なtext-alignのみに制限
const allowedStyles = {
td: { "text-align": [/^(left|center|right)$/] },
th: { "text-align": [/^(left|center|right)$/] },
};
この正規表現により、text-align: left、text-align: center、text-align: rightのみが許可され、それ以外のCSS(background-image: url(javascript:...)など)はブロックされます。
URLスキームの制限
リンクや画像のURLにjavascript:やdata:プロトコルが使われると、XSSの経路になります。許可するスキームをhttp、https、mailtoに限定します。
const sanitizeOptions = {
allowedSchemes: ["http", "https", "mailto"],
allowedSchemesByTag: {
a: ["http", "https", "mailto"],
img: ["http", "https"],
},
};
コピペ可能な完全な設定コード
以上の設計をまとめた、sanitize-htmlの完全な設定コードです。
import sanitizeHtml from "sanitize-html";
/** markedが生成するHTML要素のホワイトリスト */
const ALLOWED_TAGS: string[] = [
// ブロック要素
"p",
"h1",
"h2",
"h3",
"h4",
"h5",
"h6",
"ul",
"ol",
"li",
"blockquote",
"pre",
"hr",
"br",
"table",
"thead",
"tbody",
"tr",
"th",
"td",
// インライン要素
"a",
"strong",
"em",
"code",
"del",
"img",
// GFMタスクリストのチェックボックス
"input",
// mermaid・GFM Alert・折りたたみ用の構造要素
"div",
"span",
"section",
"details",
"summary",
// GFM AlertアイコンのSVG要素
"svg",
"path",
];
/** 許可する属性(タグごと) */
const ALLOWED_ATTRIBUTES: Record<string, sanitizeHtml.AllowedAttribute[]> = {
a: ["href", "title", "target", "rel"],
img: ["src", "alt", "title", "width", "height"],
// 見出しのID属性(目次リンク用)
h1: ["id"],
h2: ["id"],
h3: ["id"],
h4: ["id"],
h5: ["id"],
h6: ["id"],
// GFMタスクリストのチェックボックス
input: ["type", "checked", "disabled"],
// GFM Alertのクラス属性
p: ["class"],
div: ["class"],
span: ["class"],
section: ["class"],
// SVGアイコンの属性
svg: ["class", "viewBox", "width", "height", "aria-hidden"],
path: ["d"],
// コードブロックの言語ヒント
code: ["class"],
// テーブルセルの配置
td: ["align", "style"],
th: ["align", "style"],
};
/**
* Markdown由来のHTMLをサニタイズする関数。
* markedの出力をdangerouslySetInnerHTMLに渡す前に呼び出す。
*/
export function sanitize(html: string): string {
return sanitizeHtml(html, {
allowedTags: ALLOWED_TAGS,
allowedAttributes: ALLOWED_ATTRIBUTES,
// 安全なURLスキームのみ許可
allowedSchemes: ["http", "https", "mailto"],
allowedSchemesByTag: {
a: ["http", "https", "mailto"],
img: ["http", "https"],
},
// 自己終了タグの保持
selfClosing: ["br", "hr", "img", "input"],
// 不許可タグのマークアップを除去(テキスト内容は保持)
disallowedTagsMode: "discard",
// style属性はtext-alignの安全な値のみ許可
allowedStyles: {
td: { "text-align": [/^(left|center|right)$/] },
th: { "text-align": [/^(left|center|right)$/] },
},
});
}
自分のプロジェクトで動作を確認する方法
ホワイトリストの設定が正しく機能しているかを確認するには、「危険な入力が除去されること」と「正当な入力が保持されること」の両面をテストする必要があります。
危険な入力の除去を確認する
サニタイズ関数が攻撃ベクトルを正しくブロックするかを確認します。
import { sanitize } from "./sanitize";
// scriptタグが除去されること
const result1 = sanitize("<script>alert(1)</script>");
console.assert(!result1.includes("<script>"), "scriptタグが残っている");
// イベントハンドラ属性が除去されること
const result2 = sanitize('<img src="x" onerror="alert(1)">');
console.assert(!result2.includes("onerror"), "onerrorが残っている");
// javascript:プロトコルが除去されること
const result3 = sanitize('<a href="javascript:alert(1)">click</a>');
console.assert(!result3.includes("javascript:"), "javascript:が残っている");
// リンクテキストは保持される
console.assert(result3.includes("click"), "リンクテキストが消えている");
// data:プロトコルが除去されること
const result4 = sanitize(
'<img src="data:text/html,<script>alert(1)</script>" alt="xss">',
);
console.assert(!result4.includes("data:"), "data:プロトコルが残っている");
正当な入力の保持を確認する
サニタイズによって、正しいMarkdown出力が壊れていないことも確認します。
// GFMタスクリストのチェックボックスが保持されること
const taskListHtml =
'<ul><li><input type="checkbox" checked="" disabled="" /> 完了</li></ul>';
const result5 = sanitize(taskListHtml);
console.assert(result5.includes("<input"), "inputタグが消えている");
console.assert(result5.includes('type="checkbox"'), "type属性が消えている");
console.assert(result5.match(/checked/), "checked属性が消えている");
console.assert(result5.match(/disabled/), "disabled属性が消えている");
// GFM Alertのクラスとアイコンが保持されること
const alertHtml =
'<div class="markdown-alert markdown-alert-note">' +
'<p class="markdown-alert-title">' +
'<svg class="octicon" viewBox="0 0 16 16" width="16" height="16" aria-hidden="true">' +
'<path d="M0 8z"></path></svg>Note</p>' +
"<p>内容</p></div>";
const result6 = sanitize(alertHtml);
console.assert(
result6.includes("markdown-alert-note"),
"Alertクラスが消えている",
);
console.assert(result6.includes("<svg"), "SVGアイコンが消えている");
// mermaidのdivクラスが保持されること
const mermaidHtml = '<div class="mermaid">graph TD; A-->B;</div>';
const result7 = sanitize(mermaidHtml);
console.assert(
result7.includes('class="mermaid"'),
"mermaidクラスが消えている",
);
Tip
テスティングフレームワーク(Jest、Vitestなど)を使っている場合は、上記の確認をexpect(...).toContain(...)やexpect(...).not.toContain(...)で記述するとより見やすくなります。ポイントは「除去されるべきものが除去されているか」と「保持されるべきものが保持されているか」の両面を網羅することです。
markdownToHtml()への統合パターン
サニタイズ関数を個別の呼び出し箇所ごとに適用するのではなく、Markdown→HTML変換の共通関数内に統合することで、適用漏れを構造的に排除できます。
import { Marked } from "marked";
import { sanitize } from "./sanitize";
const markedInstance = new Marked(/* 拡張機能の設定 */);
/**
* MarkdownをHTMLに変換する共通関数。
* サニタイズが統合されているため、呼び出し元でサニタイズを意識する必要がない。
*/
export function markdownToHtml(md: string): string {
const result = markedInstance.parse(md, { gfm: true, breaks: false });
if (typeof result !== "string") {
throw new Error("Unexpected async result from marked.parse");
}
// サニタイズを共通関数内で適用
return sanitize(result);
}
この設計の利点は以下のとおりです。
- 適用漏れの防止:
markdownToHtml()を使うすべての箇所(ブログ記事、ドキュメントページなど)が自動的に保護される - 呼び出し元の変更不要: 既存のコードが
markdownToHtml()を使っていれば、呼び出し元を一切変更せずにサニタイズが有効になる - 設定の一元管理: ホワイトリストの変更が必要になったとき、修正箇所はサニタイズ関数の1ファイルだけ
Warning
この統合パターンの前提は、Markdown由来のHTMLが必ずmarkdownToHtml()を経由してレンダリングされることです。もし別の経路でHTMLを生成してdangerouslySetInnerHTMLに渡す箇所がある場合は、その経路にも個別にサニタイズを適用する必要があります。
まとめ: 自分のプロジェクトに導入するチェックリスト
Markdown出力のサニタイズを自分のプロジェクトに導入する際は、以下のステップで進めるとスムーズです。
markedの出力にサニタイズが適用されているか確認する。 markedはv0.7.0以降、組み込みのサニタイズ機能を提供していません。
dangerouslySetInnerHTMLに渡す前に、必ず外部ライブラリでサニタイズしてください。プロジェクトの要件に合ったサニタイズライブラリを選ぶ。 SSR中心ならsanitize-html、ブラウザ中心ならDOMPurifyが有力な選択肢です。
ホワイトリストを設計する。 markedが生成するタグと、使用している拡張機能(GFM Alert、mermaidなど)が出力するタグ・属性を洗い出し、必要なものだけを許可します。
URLスキームを制限する。
javascript:とdata:プロトコルをブロックし、http、https、mailtoのみ許可します。共通関数に統合する。
markdownToHtml()のような共通変換関数の内部でサニタイズを適用し、適用漏れを構造的に防ぎます。動作確認を書く。 「危険な入力が除去されること」と「正当な入力が保持されること」の両面でテストします。特に、GFMタスクリストの
input属性やGFM Alertのクラス属性など、ホワイトリストの境界にある要素の確認が重要です。
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