cron式の書き方ガイド: 環境別の違いと限界を徹底解説
目次
はじめに
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この記事で分かること:
- cron式の基本的な書き方(5フィールドと特殊文字)
- 環境ごと(Linux / GitHub Actions / AWS EventBridge / Google Cloud Scheduler / Kubernetes)の構文の違い
- cron式でできないことと、その回避策
- systemd timerとの使い分け
- よくある間違いとトラブルシューティング
cronの基礎
cron式は5つのフィールドをスペースで区切って記述します(crontab(5) 参照)。
分(0–59) 時(0–23) 日(1–31) 月(1–12) 曜日(0–7, 0と7が日曜)
特殊文字: *(すべて)、,(列挙: 1,15)、-(範囲: 1-5)、/(ステップ: */5)
よく使うパターン(検証には crontab.guru が便利):
| cron式 | 意味 |
|---|---|
0 3 * * * |
毎日 午前3時 |
0 9 * * 1-5 |
平日 午前9時 |
*/5 * * * * |
5分ごと |
0 0 1 * * |
毎月1日 0時0分 |
0,30 9-17 * * 1-5 |
平日 9〜17時 毎時0・30分 |
環境別cron式の互換性マトリクス
同じように見えるcron式でも、実行環境によって構文や動作が異なります。以下の比較表で主要5環境の差異を整理します。
| 比較軸 | Linux crontab (Vixie cron) |
GitHub Actions | AWS EventBridge Scheduler |
AWS EventBridge Rules |
Google Cloud Scheduler |
Kubernetes CronJob |
|---|---|---|---|---|---|---|
| フィールド数 | 5 | 5 | 6 | 6 | 5 | 5 |
| フィールド順 | 分 時 日 月 曜日 | 分 時 日 月 曜日 | 分 時 日 月 曜日 年 | 分 時 日 月 曜日 年 | 分 時 日 月 曜日 | 分 時 日 月 曜日 |
| 年フィールド | なし | なし | あり(オプション) | あり(オプション) | なし | なし |
?(指定なし) |
非対応 | 非対応 | 対応(日・曜日で必須) | 対応(日・曜日で必須) | 非対応 | 非対応 |
L(月末・最終曜日) |
非対応 | 非対応 | 対応 | 対応 | 非対応 | 非対応 |
W(直近平日) |
非対応 | 非対応 | 対応 | 対応 | 非対応 | 非対応 |
#(第N曜日) |
非対応 | 非対応 | 対応 | 対応 | 非対応 | 非対応 |
| タイムゾーン指定 | TZ変数で上書き可(実装依存) | UTCのみ(固定) | スケジュール設定で指定可 | 非対応(UTC固定) | tz database形式で指定可 | .spec.timeZoneで指定可(v1.27 GA) |
| 日と曜日の同時指定 | OR条件 | OR条件(推定) | ?で片方を必ず無効化 |
?で片方を必ず無効化 |
OR条件 | OR条件 |
各環境の公式ドキュメント:
- Linux crontab(5)
- GitHub Actions schedule
- AWS EventBridge Scheduler
- AWS EventBridge Rules
- Google Cloud Scheduler
- Kubernetes CronJob
同じcron式でも動作が変わる具体例
例1: 日と曜日の同時指定
0 9 15 * 1(毎月15日かつ月曜日 午前9時という意図)
- Linux crontab: 「毎月15日、または毎週月曜日」のどちらかで実行(OR条件)
- AWS EventBridge:
?を使って片方を無効化しなければエラーになる。cron(0 9 15 * ? *)のように書く
例2: GitHub ActionsはUTC固定
GitHub ActionsのscheduleトリガーはUTCベースです。日本時間(JST = UTC+9)で午前9時に実行したい場合は、UTC午前0時を指定します。
on:
schedule:
- cron: "0 0 * * *" # UTC 0:00 = JST 9:00
Warning
GitHub Actionsのscheduleトリガーには実行遅延が発生することがあります。負荷の高い時間帯には数分から数十分のずれが生じる場合があり、精密な時刻実行には向いていません。
cron式の限界と回避策
標準的なcron式には表現できないスケジュールパターンがあります。
第N曜日(例: 第2火曜日)
標準の5フィールドcron式では直接指定できません。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
AWS EventBridgeの#構文 |
cron(0 9 ? * 3#2 *) で「第2火曜日 午前9時」を表現(3=火曜日、#2=第2) |
| スクリプト内での日付判定 | crontab側では毎週実行し、スクリプト内で date +%d が8〜14の範囲かを判定する |
# 毎週火曜日に実行し、スクリプト内で第2火曜日のみ処理する例
0 9 * * 2 /path/to/script.sh
# script.sh内で
DAY=$(date +%d)
if [ "$DAY" -ge 8 ] && [ "$DAY" -le 14 ]; then
# 第2火曜日の処理
fi
月末日
標準cron式では「毎月最後の日」を直接指定できません。月によって最終日が28〜31日と異なるためです。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
AWS EventBridgeのL構文 |
cron(0 9 L * ? *) で「毎月最終日 午前9時」を表現 |
| スクリプト内での判定 | 毎日実行し、スクリプト内で「明日が翌月1日かどうか」を判定する |
# 毎日実行し、スクリプト内で月末のみ処理する例
0 9 * * * /path/to/end-of-month.sh
# script.sh内で
TOMORROW=$(date -d tomorrow +%d)
if [ "$TOMORROW" = "01" ]; then
# 月末の処理
fi
秒単位の実行
標準cron式の最小粒度は1分です。秒単位での実行が必要な場合の代替手段:
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| sleep併用 | 1分ごとにcronで起動し、スクリプト内で sleep を使って秒単位に分割する |
| systemd timer | OnCalendar=*:*:0/30 のように秒単位での指定が可能 |
| AWS EventBridgeのrate式 | rate(1 minute) が最小単位(秒は非対応) |
# cron + sleep で30秒ごとに実行する例
* * * * * /path/to/script.sh
* * * * * sleep 30; /path/to/script.sh
隔週・3週ごとの実行
cronはカレンダーの日付・曜日ベースで動作するため、「N週間ごと」という累積カウントはできません。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| スクリプト内での週番号判定 | date +%V で週番号を取得し、偶数週のみ処理する |
| 状態ファイルの利用 | 最終実行日をファイルに記録し、経過日数で判定する |
systemd timerとの比較
Amazon Linux 2023では cronie がデフォルト非搭載となっており、systemd timerが推奨代替として位置づけられています(AWS公式ドキュメント)。
| 比較軸 | cron | systemd timer |
|---|---|---|
| 構文 | cron式(5フィールド) | OnCalendar= 構文(*:0/5 = 5分ごと) |
| 最小粒度 | 1分 | 1秒(OnCalendar=*:*:0/30 で30秒ごとなど) |
| ログ管理 | /var/log/syslog 等 |
journalctl -u <timer名> で確認 |
| ミスファイア処理 | スキップ | Persistent=true で再起動後に遅延実行 |
| 設定場所 | crontabファイル | .timer + .service ファイルのペア |
選択の目安: 既存のcrontab資産や移植性を重視する場合はcron。Amazon Linux 2023など新規構築でsystemdが標準の環境ではsystemd timerが第一候補です(systemd.timer公式ドキュメント)。
よくある間違いとトラブルシューティング
曜日の数値の混乱
cron式では0と7がどちらも日曜日、1が月曜日、6が土曜日です。プログラミング言語によっては日曜日を1として扱う場合もあるため、混乱しやすいポイントです。crontab.guru で曜日の解釈を確認できます。
タイムゾーンの罠
cronはサーバーのシステムタイムゾーンに従います。クラウド環境ではUTCに設定されていることが多く、日本時間で考えたスケジュールをそのまま書くと9時間ずれます。
対処法:
- サーバーのタイムゾーンを
timedatectlやdateコマンドで確認する - crontabファイルの先頭に
TZ=Asia/Tokyoを記述する(Vixie cronなど一部の実装でサポート) - GitHub ActionsはUTC固定のため、JSTから9時間を引いた時刻でcron式を書く
- Google Cloud SchedulerやAWS EventBridge Schedulerはタイムゾーン設定で対応する
crontabの管理tips
crontab -e で編集、crontab -l で内容確認ができます。ジョブが実行されない場合は /var/log/syslog や /var/log/cron のログを確認するのがトラブルシューティングの第一歩です。cronジョブの出力はデフォルトではメール送信されますが、メール未設定の環境では出力が破棄されます。出力をファイルにリダイレクトして記録するのが確実です。
Caution
crontab -r は確認なしで全エントリを削除します。-r と -e を打ち間違えないよう注意してください。
# 標準出力と標準エラー出力をログファイルに記録する例
0 3 * * * /home/user/backup.sh >> /var/log/backup.log 2>&1
まとめ
cron式は5フィールドの組み合わせでスケジュールを表現しますが、実行環境によって構文や挙動が異なります。主なポイントを再確認します。
- フィールド数: Linux / GitHub Actions / GCP / Kubernetesは5フィールド。AWS EventBridgeは6フィールド(年フィールド追加、日・曜日の一方に
?必須) - タイムゾーン: GitHub ActionsはUTC固定。Google Cloud SchedulerとAWS EventBridge Schedulerはタイムゾーン指定可。Kubernetes v1.27以降は
.spec.timeZoneで指定可。AWS EventBridge RulesはUTC固定 - 拡張構文:
L(月末)、#(第N曜日)、W(直近平日)はAWS EventBridgeのみ対応 - 秒単位・隔週: 標準cron式では表現できない。systemd timerやスクリプト内の判定で対応する
本番環境への設定前に、各サービスの公式ドキュメントで仕様を確認することを強く推奨します。cron式の構文確認には crontab.guru が役立ちます。